ブリッジと矯正を併用する際の大きな疑問のひとつに、「どちらの治療を先に行うべきか?」というものがあります。結論としては、「ケースによる」ものの、一般的には先に矯正治療を行い、その後にブリッジを作成する方が適切とされています。
その理由は以下のとおりです。
- 歯列矯正により歯の位置が変わるため、先にブリッジを作ってしまうと矯正後に合わなくなる。
- ブリッジを外す、再作成するなどの二重手間が発生し、費用・時間ともにロスが大きくなる。
- 支台歯の負担を最小限にするには、歯並びが整った状態で補綴設計を行う方が精度が高い。
以下に、症例別の治療順ガイドラインをまとめます。
症例タイプ
|
推奨される治療順
|
補足説明
|
歯列が大きく乱れている場合
|
先に矯正 → 後でブリッジ
|
歯並びを整えた後に精密な補綴設計が可能
|
ブリッジの再製作を予定している場合
|
先に矯正 → 後でブリッジ
|
再製作前提であれば、矯正後に適切な支台形成が可能
|
既存のブリッジが機能的・審美的に問題なし
|
状況に応じて同時またはブリッジ先
|
精密検査のうえ、矯正の影響がないと判断された場合は同時も可能
|
前歯にブリッジがあるが咬合に問題あり
|
基本は矯正が優先
|
咬合調整を先に行うことで、長期安定性が高まる
|
そのままブリッジを使って矯正するケース
ブリッジが装着された状態でも、矯正治療が可能なケースは実際に存在します。ただし、これはごく限られた条件が整っている場合に限られ、矯正装置を付ける歯やブリッジの位置、構造、素材、そして移動が必要な歯の有無などを総合的に診査する必要があります。
そのままブリッジを使える症例では、ブリッジが設置されている歯に矯正による移動を必要としない場合が一般的です。たとえば、奥歯に固定されたブリッジがあり、前歯の歯並びや噛み合わせを整えたいときなどが該当します。この場合、ブリッジ自体に手を加えることなく、ワイヤーやマウスピースなどの矯正装置を他の歯に装着し、問題のある部分だけを矯正します。
こうした症例では、以下のような条件がポイントになります。
- ブリッジが固定されている歯が動かす必要のない歯であること
- ブリッジの構造が安定していて装置の装着を妨げないこと
- 他の歯への矯正力がブリッジの支台歯に悪影響を及ぼさないこと
- ブリッジの材質や形状が装置と干渉しないこと
また、マウスピース矯正を選択する場合は、ブリッジ部分にアタッチメント(突起状の構造)を装着できないため、治療設計に制限が生じます。そのため、治療プランの段階で歯科医師によるシミュレーションを十分に行い、リスクと可能性を丁寧に検証することが必要です。
一方で、費用面や時間面では比較的負担が少なく、以下のようなメリットが得られます。
メリット
|
内容
|
再治療の必要なし
|
ブリッジを外したり作り直す必要がない
|
矯正費用の節約
|
補綴処置が不要なので追加費用が発生しない
|
治療期間が短縮される可能性
|
仮歯作成や補綴調整がない分、全体の流れが早くなる
|
ブリッジを切断・仮歯に置き換える矯正パターン
ブリッジが矯正治療の妨げとなる場合、その補綴物を一時的に取り外す、または切断して仮歯に置き換えるという選択肢があります。この処置は、ブリッジで固定されている歯が移動の対象である場合に必要となります。
たとえば、歯並びが大きく乱れており、ブリッジ支台歯が矯正力のかかる重要なポイントであるとき、支台歯を動かせない状態での矯正は不可能に近いため、仮歯に変更して歯の移動を可能にする方法が取られます。
このような症例で多くの患者が気になるのは、以下の点です。
- 切断後のブリッジは元に戻せるのか
- 仮歯は見た目や機能面で問題ないのか
- 費用や時間はどの程度追加されるのか
- マウスピース矯正でも対応可能か
- 仮歯中のトラブル対策はあるのか
矯正中の仮歯使用においては、以下のようなテーブルで整理できます。
項目
|
内容
|
使用する仮歯の種類
|
レジン仮歯(保険適用)、セラミック仮歯(自費)など
|
見た目
|
仮歯でも自然な色調に調整可能
|
耐久性
|
数ヶ月〜1年程度の使用を想定
|
矯正装置との相性
|
ワイヤー・マウスピースどちらも設計次第で対応可能
|
|
|